鴨居玲展 静止した刻 図録

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鴨居玲とは

鴨居玲は1928年、石川県出身の洋画家である。出身地の石川県立美術館では鴨居の命日となる9月7日前後に、毎年作品展が開催されている。

地元、金沢で宮本三郎に師事した。二紀会で活動するも、海外に渡り製作することが度々あった。この間1969年、安井賞を受賞し注目されるようになったが、1982年に持病の狭心症の発作が起こる。医師からは入院を勧められるも、個展直前のことから入院を拒み、作品の完成後に入院した。以降、死と隣り合わせの人生が始まったのである。

もともと鴨居は無類の酒好きとしても知られ、酔った勢いで友人を喧嘩し、絶縁状態になることも多かったという。そして孤独と向き合うことが多くなる。ついには1985年9月7日、自家用車に排気ガスを引き込んでの自死に至る。司法解剖では、急性アルコール中毒と思える大量のアルコールが体内から検出されたらしい。これは自傷の延長として弱った心臓が災いして死に至ったという見方をする人がいる。しかし、富山によると、後にわかったことだが、すでに鴨居はがんに罹っており、絵を描く体力が失せていたからであろう、と語った。

死後、鴨居の残された神戸の画室には、赤い背景に赤い服を着た自画像がイーゼルに掛けられたまま残されていた。実は同じような人物と色彩で「出を待つ道化師」という作品があるが、遺作は自画像と判断されている。

作品

老人、老兵、ピエロなどの姿がある。こられの人は鴨居が過去に作品で描いた人物である。
実際に鴨居の寝室にあった一対の障子であり、左側には首を吊った死人の姿を、右側には生首を描いてある。その顔を見ると、鴨居自身であることは容易に想像がつく。死に対する恐れではなく、願望を描いた作品で、これも絶筆である。
もう一つ印象的な自画像は、自分の顔を持つ自画像。頭部はのっぺらぼうのようになにも描かれていない。そして、手にした顔は鴨居そのままである。
こうした鴨居の姿をいわゆる躁うつ病と推定する人がいる。その病名が正しい鴨居の精神状態かどうかは判断できないが、精神状態が作品に現れることはある。いずれも、鴨居の持病である狭心症の発作や富山の言うがんの罹患によって、死がすぐそばにいるようになってしまった自分の姿を描いた作品である。そして、鴨居のアトリエには自分の姿を映すための大きな鏡がイーゼルの向こう側には置かれていたのであった。

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カテゴリー:本・雑誌・漫画>>>本>>>アート・デザイン・音楽
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